宝石は見て、触ってそして心でそれらを楽しむもの。しかし鉱物の魅力に取りつかれた者にとって、それらが長い年月をかけて育んだ背景、そして採掘されるその瞬間を自らの目で確かめてみたいもの。

今回は悠久な自然の歴史という1ページを覗き込める、世界で2番目に大きな晶洞をご紹介!スペイン発の興味深いニュース、日本の皆さんの心の銅線にもきっと火をつけるはず。

世界で2番!欧州で1番大きな晶洞!その謎めく形成に迫る

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スペインでは夏頃にニュースで報道されましたが、現在鉱物または宝石マニアだけでなく、世界中の地質学者が熱視線を送っている鉱山があります。そうそれこそがスペインはアンダルシアのプルピ鉱山。

ここでは閉山されたかつての銀山で見つかった巨大な晶洞について解説していきたいと思うので、ぜひ好奇心の扉を全開にしてお読みいただければ幸いです!

そもそも晶洞とは?晶洞=水晶の洞窟なの?

white and gray stone on brown wooden table
Photo by Alina Vilchenko on Pexels.com

晶洞、鉱物マニアでなければあまり馴染みの深い言葉ではないかもしれません。晶洞とはいわゆる玄武岩、堆積岩の内側に形成された空洞のことを指します。皆さんも一度はどこかでみたことがある水晶などが結晶化され、口を開いた「がま」を見たことがあることでしょう。アメジストの例が分かりやすいですが、内側に向け結晶が育った空洞の石をイメージすれば、何となくイメージができると思います。

晶洞=ガマ=ジオードなどいくつかの呼び名がありますが、岩の中に空洞ができて鉱物が内部で成長するというロマンが詰まったもの、それが晶洞なのです。基本的にキーホルダーに加工される程度の大きさから、ちょうどいいオブジェとして加工されるもの、はたまた数名メートルを超えるものまで存在し、今回ご紹介するプルピ晶洞は後者の巨大結晶で覆われた洞窟のことです。

次項では話題が話題を呼ぶプルピ晶洞の正体について紐解いていきたいと思います!

どのような形でプルピ晶洞が形成されたのか?

そもそもプルピ晶洞は今年になって発見されたわけではなく、1999年マドリードの鉱物学者チームによって発見され、その巨大な晶洞の正体はセレナイト(透石膏)であることが分かっています。

その大きさは全長8メートル、高さは2メートルを誇り欧州では最大の晶洞で、プルピのリカ鉱山の地下60メートルに位置する晶洞です。

プルピ晶洞の結晶はSF世界に潜り込んだかのような巨大結晶に囲まれ、セレナイトの結晶は非常に巨大なまでに育成していることが特徴であり、これは恐竜が大地を支配していた太古の昔から結晶が成長→溶解を繰り返すことで一つの大きな結晶として成長したことが要因と考えられます。(オストワルド熟成と言います。)

勿論ここまでの大きさに成長するのは類まれなことであり、晶洞内の気温や湿度などが間接的に関係しているのも明白です。

ただしこのプルピ晶洞が実際にどれくらいの時間をかけて育成されたかについては正確な時期は判明しておらず、6万年から200万年という悠久の長い年月をかけてこのような鉱物学の宝石箱を育んできました。今後もプルピ晶洞の研究は続き、結晶育成の謎が解明されていくことでしょう。

因みに現在もスペイン内外の鉱物学専門家による調査が続くプルピ晶洞ですが、メキシコのナイカ晶洞とは異なり開かれた晶洞になっているので、宝石または鉱物好きの方にはもはや外せない目的地になってくるはずです。

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世界で唯一の入洞可能な晶洞!入洞条件、値段から注意点まとめ

リカ鉱山にあるプルピ晶洞。本国スペインでも2019年夏頃にジワジワと話題が広がり、全国チャンネルでニュースとして取り上げられた結果、多くの人々に知られるようになりました。

メキシコのナイカ晶洞とは異なり、専門家ではなくても入洞できる為、アンダルシアの片田舎アルメリアを支える一大観光産業になっています。

勿論国籍問わず見学が可能なので、ここではその気になるプルピ晶洞ツアーに関してまとめていきたいと思います。

グループ見学は22ユーロ!

まずプルピ晶洞の見学に関する入場はオンラインで申込可能です。プルピ晶洞の公式HPはスペイン語だけでなく英語ヴァージョンも完備されているので、その購入に関しての敷居は高くないはず。

入洞料金は大人22ユーロ、8歳から16歳の場合は10ユーロという値段設定になっています。基本的に8歳未満の方の入洞はできないのでその点には留意してください。

30分の区切りで入洞ツアーの予約が可能ですが、個人ではなく12~15人のグループツアーになります。15人単位のグループツアーに関しては、特別料金225ユーロが適応されるので、大人数で見学希望の方はこちらを申込みましょう。

なお見学ツアーはスペイン語による案内になりますが、グループ内の全員が希望する場合に限り英語でのツアーも実施可能です。

ちなみにその見学時間は約90分程度となっています。事項では見学についてより深く、そして注意点について解説していきたいと思います。

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プルピ晶洞の見学で体験できることと出来ないこと

プルピ晶洞では自然保護の観点から、多くの規則が制定されています。ここでは気になるそれらの規則について、簡潔にまとめていきたいと思います。

① 指定場所以外の内部写真撮影は厳禁
② がま内部への進入禁止
③ 晶洞内の鉱物の持ち出しは不可
④ 鉱物に触ることは厳禁
⑤ ハイヒールやサンダルでの入洞
⑥ 慢性の心臓疾患、癲癇、喘息、糖尿病、閉所恐怖症または広場恐怖症などを患っている方の入洞は原則禁止
⑦ 入洞の際には本人確認の為パスポートを提示
⑧ ケービング用ヘルメットを着用(ヘルメット貸出しは料金に含まれる。)

これらは非常に厳重にチェックされるので、見学希望者の方は全ての規則を守って入洞しなければなりません。

基本的にガイドの案内に沿って見学をすること、そして鉱山外にあるくず鉱捨て場での鉱物採取は許可されているものの、非常に限局的なツアーしか許されていません。ただしプルピ晶洞には公式ショップも併設している点、また夜にはライトアップされた美しい夜景を楽しめる点は見逃せません!

直接晶洞の中を這って進むことこそはできませんが、それでもトータル40メートルもの鉱山内部は、「まるで結晶で作られた神秘的な宮殿を思わせる!」と来場者を驚かせているようです。

なお入場料金にはプルピ近郊にある「San Juan De Los Torreros」と呼ばれる海沿いの要塞の見学も料金に含まれているのでそちらもぜひ覗いてみてくださいね。

詳しくはこちらのサイトをチェック!

http://www.geodapulpi.es/Servicios/cmsdipro/index.nsf/index.xsp?p=Geoda&lang=en

住所 Poligono S-AG2A, 33, 04640 Pulpí, Almería
見学可能時間 月~木曜日 9時30~19時、金~日曜日 9時~19時30分
連絡先メール  informacion@geodapulpi.es

まとめ

メキシコのナイカ鉱山の次ぐ規模であり、ヨーロッパでは最大のプルピ晶洞。

その形成に関しては未だに研究途上にありますが、南スペインにご旅行の際はぜひ完全防備の登山スタイルでプルピ晶洞を見学してみてはいかがでしょうか?

銀山としての歴史は1840年からとそこまで古くはありませんし、見学できる範囲こそ限られてはいますが、鉱物学的、地質学的にも非常に興味深いことは確かです。透明ながまの中を私たちがミニマム化して突き進む、そんなイメージを浮かべていただければ、いかにスケールが大きいファンタスティックな世界であるのかを実感できることでしょう。