FABERGEと書いてファベルジェと読みます。ジュエリー通ならもはやお馴染ですね!今回は帝政ロシアが生んだジュエリーの魔術師ファベルジェを大特集です。あのまん丸卵のジュエリーから魅惑のエナメルワークまで、目の保養にピッタリのファベルジェワールドにいざ誘われんことを!
ファベルジェとイースターエッグ
ロシアと言えばピロシキ、ピロシキと言えばファベルジェ、ということで、ロシアの伝統・格式は食生活、正教会だけにあらず。素晴らしきロシアの琴線に触れる美、それこそ帝政ロシアが生んだファベルジェにあるのです。
イースターエッグってなに?
ファベルジェを語る前にまず知っておかなければならないこと、それはイースターについてです。イースターを簡単に説明すると、イエス・キリストが、ピラトによって磔刑に架けられ拷問の後に息絶え、その3日後に復活した奇跡をお祝いする、キリスト教徒にとって大切なお祭りのこと。
各宗派や国によってもその呼び名や時期は異なりますが、イースターまたは復活祭として、キリスト教国家ではない国々でも、その存在は広く知られています。
このお祭りごとの最中に登場するのが、ゆで卵を様々なカラーリングで染め上げたイースターエッグです。真っ赤なイースターエッグ、レインボーにモザイク様のものなど……etc。また多産の象徴であるウサギをモチーフにしたイースターバニーチョコレートなどは、特にカトリック圏で老若男女関わらず愛されています。
ファベルジェのイースターエッグとロマノフ王朝
さてなぜそのイースターエッグが、ロシアの至宝ファベルジェと関連があるのでしょうか?ここではゆで卵とファベルジェの切っても切れない関連について、ロマノフ王朝の歴史を交えながらご紹介したいと思います。
1846年5月30日に、ロシアンジュエリー界の歯車を変える一人の男が生まれます。その名もピーター・カール・ファベルジェ。父親グスタフ・ファベルジェがドイツに移住していた背景もあり、ピーター自身はその彫金の腕をドイツのドレスデンで磨いたを言われています。
彼はドイツの金細工学校で黙々と腕を磨きながら、グランドツアーとしてイギリス、フランスなどに赴き、その地で高貴で華やかな宝飾技術を身に着け、本国ロシアへと渡っていきました。
本国ロシアのサンクトペテルブルグでは、ピーターが制作するジュエリーに注目が集まり、金細工職人としての地位を頑固たるものにしていきます。彼と彼の工房が制作するジュエリーは、その彫金の細かさだけではなく、ロシア産の様々な輝石を巧みに使い、そして廃れたはずのエナメル技術をロシアンジュエリーに応用し始めたのです。
当時の皇帝アレクサンドル3世はファベルジェを大変気に入り、瞬く間に宮廷ご用達ゴールドスミスとして認定!そしてアレクサンドル3世が初めてピーターにイースターエッグの制作を命じるのです。勿論ここでいうイースターエッグはゆで卵に彩色を施したものではなく、ゴールド、シルバーに様々なエナメル彩色を施し、豪奢な宝石を散りばめた、皇帝の為のインペリアル・イースターエッグを指します。
それ以後ロマノフ王朝にはファベルジェ工房によるインペリアル・イースターエッグの制作注文が続き、ロシア宮廷には豪華絢爛なイースターエッグが王家の象徴として愛されていくのです。
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ファベルジェ工房の特質すべきジュエリー達
ファベルジェの名声が知れ渡るにつれ、彼の工房はムクムクと巨大化。サンクトペテルブルグの他にモスクワ、そして国外のウクライナやイギリスにもファベルジェ工房が設立されていきました。全盛期のファベルジェ工房で働いていた職人たちは、ざっと500名を超えという大所帯っぷり!
彼らの工房でも特に優秀だとされた職人も何人か名前が伝わっていますが、作品には職人のサインが残っていないことも多く、特にサインドピースの作品となると大きく市場価値が上がります。
さてファベルジェ=インペリアル・イースターエッグのイメージが強いですが、ここでは彼らが制作した様々な宝飾芸術作品たちを紹介していきたいと思います。
卵だけじゃない!ファベルジェの小物からハイジュエリーまで
100年以上の歴史の中で紡がれたファベルジェのジュエリーは、勿論イースターエッグだけじゃありません!全盛期と現代のファベルジェのデザイン、彫金技術そしてモードは異なりますが、ファベルジェの伝統は然りとモダンジュエリーの枠組みに組み込まれていくのです。
イースターエッグがモチーフのペンダントトップに指輪、まるでクリスチャンディオールのハイジュエリーを思わせるキラキラのハイジュエリーに腕時計、シルバーウェアまで何でもござれ。
特に100年以上前のロンドン、サンクトペテルブルグ、モスクワなどでは、シガレットケース、傘の柄、ピン、カフス、置時計、オブジェにデスクシールまでありとあらゆるものが制作されました。勿論これらの多くは各国美術館や超高級アンティークショップに鎮座するものなので、一般庶民が気軽に購入出来るレベルのものは皆無なのです。う~ん、残念!
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ファベルジェの血筋は途絶えた?現代のファベルジェのジュエリー
ロマノフ王家御気に入りのジュエラーファベルジェも、1917年に起きたロシア革命が転機となり、一族に工房は数奇な運命を辿ることに……プライベートの敏腕工房経営者であったピーターは王室のおぜん立てもなくなり、工房は国家に徴集され、一族は欧州中へと散らばっていきました。
ファベルジェ一族はロシアという土壌が生んだ完璧なまでの芸術作品を再度紡ぐことなく、その名はイースターエッグのファベルジェから香水のファベルジェへと、変貌を告げていくのです。
その後はある投資会社の助力によりファベルジェの名前奪還に成功し、2007年についに宝石のファベルジェは不死鳥の如くカムバックを迎えるのでした。ピーター亡き後のファベルジェはインペリアルイースターエッグの製造から距離を置き、ハイジュエリーを制作するメゾンとしてその名を世界に知らしめているのです。
日本に直営店はないものの全世界22か国に支店を展開し、時計にハイジュエリー、イースターエッグモチーフのアクセサリーまで様々な商品をオンラインで購入可能です。気になるお値段は20万円以下で購入出来るリングから、数千万円までピンキリの品ぞろえ。ただし日本にいてもボタン一つでオンライン購入が可能な、フットワークの軽さは嬉しい限り!
因みに2015年にはPearl Eggと呼ばれる約100年ぶりの本格的なインペリアル・イースターエッグが新生ファベルジェで制作され、その推定価格は2~3億円とも言われています。(異なるデザインで、巡り来る四季をテーマにしたFour Seasonsも発表!)以前に本物のアンティークインペリアル・イースターエッグがガラクタ市から発見された時は、30億円超えという驚きのプライスを記録!それと比べたら近代の物は、随分お値打ちものと言うべきお買い得品なのかもしれませんね!
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ファベルジェのアンティークジュエリーならロンドンのあの店へ
アンティーク好きの方ならファベルジェのような超有名工房作品は、アールヌーボーのサインドピースと同じ位、憧れのアイテムであるはず。しかしファベルジェと言ってもサインが入っているもの、いないもの、人気があるスタイルであるか否かで、随分値段も異なってくるものです。
日本のいくつかのアンティークジュエリーショップでもファベルジェ作品が突発的に売りに出されることがあります。(小さなピンやイースターエッグのペンダントなど)これらは大概100万円弱という値段で取引されています。
日本でもファベルジェのイースターエッグは人気がある商品ですが、特にハイレベルのアンティークものはイギリスはロンドンにあるWartskiが有名です。アンティークマニアなら、「あぁ、あの超老舗の」だとか、「ジーパンに短パンじゃ絶対入れないアソコね」と言われる、スーパーが×5つ位つく高級なアンティークジュエリーショップWartskiが、世界最高峰クラスのファベルジェを取り揃えています。
店舗内でファベルジェの展覧会が催されたり、英国王室とも長い取引がある王室ご用達であるWartski。暇とお金、そして少しの勇気がある方は、ぜひぜひミュージアムクオリティーのファベルジェをゲットしに、ロンドンへ行かれることをおすすめいたします。
ファベルジェに魅了されたあなたに……
ファベルジェを美しいと思える貴女はきっと、宝石だけに依存しないジュエリーの価値が分かる女性なのでしょう。ファベルジェというブランドの希少価値そして歴史が独り歩きしている感は否めませんが、決してゆで卵一辺倒のジュエラーではないのです。
世界初のファベルジェミュージアムは外せない!
エルミタージュ美術館をはじめ、ロシアの名だたる美術館、博物館を多く要するサンクトペテルブルグでも、有数の規模そして資金が投入されて建設されたのが、ファベルジェミュージアム。
「ファベルジェのジュエリーコレクションだけにあらず!」がファベルジェミュージアムのソウルであり、18世紀の栄華を極めたロマノフ王朝のお宝から印象派絵画コレクションまで、時代にカテゴリーは違えど、ロシアが育んできた美術品コレクションが勢揃いです。
アメリカの美術品コレクターマルコム・フォーブス旧所蔵品のインペリアル・イースターエッグ、4000点を超えるファベルジェの作品群はコレクターだけでなく、ファベルジェのファの字も知らない来館者にとっても眉唾物です!イースターエッグの卓越した芸術性、作る職人によってテイストもシェイプも色合いも異なるそれぞれのイースターエッグは、一度見たら忘れられない強烈なインパクトをあなたに与えることでしょう。
ファベルジェはイースターエッグに始まり、そしてイースターエッグに終わる?果たしてそうでしょうか?芸術のジャンルを問わず、それらすべてに脈々と受け継がれてきたファベルジェの彫金そしてエナメルワークにこそ、その答えが隠されているはずです!
なおニコラス2世が母親に送ったとされる「Bay Tree Easter Egg」、ロイヤルレッドのギロッシュエナメルワークと黄色いバラの蕾がカワイイ「Rosebud Easter Egg」、そしてスズランに包まれたイースターエッグ「The Lilies-of-the-Valley Easter Egg」 は、ファベルジェミュージアムのマスターピースとして、その存在感を顕わにしています。
名称 ファベルジェミュージアム
入場料 450ルーブル(約800円弱)
ホームページ https://fabergemuseum.ru/en?
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まとめ
未だに社会主義の香りを漂わせる日本の隣人ロシア。そんな極寒の国ロシアで独自に歩みそして発展していったファベルジェ。時代と共にスタイルを変えていきながらも、そこには変わらぬ職人たちの息吹きが根付いていました。
ファベルジェという視覚で見る芸術作品はデイリーユースのジュエリーとは異なる魅力があります。しかしあえてモダンファベルジェのジュエリーで、毎日のファッションを楽しんでみるのも素敵かもしれませんね!
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